第12回

【1985年度】ヨーロッパ研修

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日本では、養護施設に入所する子どもが抱える課題に変化がみられるようになり、生活困窮や「欠損家庭」に起因する養護児童が減り、両親が健在でありながら子どもの養育の機能が果たせない家庭で、「人格形成上の障がいを負わされたり、不適応行動や問題行動に追い込まれている」子どもが増えていました。第12回研修では、こうした背景を持つ子どもの養護の処遇向上のため、施設長を補佐する主任クラスの養護施設職員10名と施設長1名、児童相談所所長兼情緒障害児短期治療施設施設長1名、児童相談所職員1名、厚生省監査官 1名の14名が、15日間の日程で、イギリス、デンマーク、スイスで19ヵ所の視察を行いました。

家庭の病理からくる情緒障害児・家族への指導と治療

研修団は、研修の首題を、「養護施設における社会不適応児童(情緒障害)の処遇向上、治療的処遇技法の導入をめざして」とし、具体的な研修課題として、①要保護児童の発見と施設への入所経路、②里親やグループホームによる児童処遇、③社会不適応児の在宅ケアのあり方、④社会不適応児に対する施設処遇のあり方、⑤施設退所のケア、を設定して視察を行いました。

視察を行った施設のなかで、唯一、精神医学、心理学を中核として「情緒障害」の治療を行っていたデンマークのウッドビー特別治療ホームでは、医師、心理治療士、ソーシャルワーカー、指導員、教師など日本の情緒障害児短期治療施設と同じような形態で、自閉症などの対人関係への重篤な障害を持つ子どもの治療を行っていました。入所期間を2年とし、6ヵ月ごとに治療プログラムを組み、月に数回、家族全員を宿泊させて家族ぐるみの集中治療を行い、1年経過すると、アスレチック(写真)などのハードな活動、料理などの実生活上の指導や教育などを行う支援の流れをとっていました。スイスやイギリスの施設では「情緒障害」という言葉は使っていませんでしたが、どこも入所者個々を尊重し、自立する力を養う援助を行う方向性が共通しており、ケースワークによる家族関係の調整や、自立のための社会適用への支援と生活指導や職業訓練が行われていました。また里親家庭でも、施設でも、子どもの問題行動に対して懲罰的な対応はとらず、治療的アプローチをしている姿勢が報告されていました。

記事作成日:2021年3月

訪問国 訪問地 視察先
デンマーク ボーゲンセ ボーゲンセ市社会福祉課
ボーゲンセ生活学園(専業里親)
オーデンセ オーデンセ市社会福祉局
サンダールームハウス(母と子の家・幼児観察施設)
ビブルン青少年アパート(青少年自立援助ホーム)
ビルクルンド(社会不適応児の生活訓練施設)
ウッドビー ウッドビー特別治療ホーム(情緒障害児の治療施設)
スイス チューリッヒ ヒルスランデン(中学校併設の女子教護院)
ダップレス氏記念青少年ホーム(職業訓練所併設の男子教護院)
ユーゲントシードゥルンク ハイツェンホルツ(乳幼児から青少年までが居住する養護施設)
イギリス バーミンガム バーミンガム市社会局
ステファンソン コート子どもの家(民間グループホーム)
レディウッド・コミュニティセンター
バークデイルホーム(環境不適応児の生活治療施設)
名称のない施設(社会不適応児のための施設)
ロンドン ニコラスガルパーンロッジ(高齢児を対象とした社会不適応児生活治療施設)
名称のない施設(ファミリー・グループホーム)
エセックス ドクター・バーナード・ヴィレッヂ(民間の小舎制養護施設)
ミドルセックス 名称のない施設(高齢児及び母子の養護・緊急住宅)


※報告書に記された名称・表現で記載

第12回 資生堂ヨーロッパ三ヵ国児童福祉研修団報告書

1985年12回

第12回 資生堂ヨーロッパ三ヵ国児童福祉研修団報告書

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